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雑草系

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哲学史

計算せずに書き進んで完成したら9995字だった(凄。

《哲学とは何か?》
哲学は内容が千差万別である。ある者は自然について論じ、ある者は神について考察し、別な者は認識について何か言っている。言語や社会を問題にする者もいる始末だ。
けれども、バラバラのように見えても、彼らは実は常に同じことを問題にしている。それは「すべてを説明する原理」を探求するということだ。
ところがその全体に関わる普遍的原理をどこに求めるか、「すべて」と言ってもどこまで入るのかが時代や哲学者によって様々だったのだ。


《全体像》
古代:哲学の誕生。ギリシャ哲学の隆盛。ソクラテス、プラトン、アリストテレスなど
中世:神学と哲学とのバランス問題。アウグスティヌス、トマスなど
近世:「私」を基盤にして認識の問題を問う哲学。デカルトなど
近代:近代哲学の完成。近代哲学への批判。カント、ヘーゲル、キルケゴールなど
現代:近代的合理性の肯定。フッサール、ウィトゲンシュタイン、レヴィ=ストロースなど
現代2:近代的合理性への批判。哲学そのものへの批判。デリダ、フーコー、ドゥルーズなど




《哲学史》

【古代哲学(前600~200くらい)】
●哲学者たち●
ソクラテス以前:タレス、アナクシマンドロス、ヘラクレイトス、パルメニデス、デモクリトス
ソフィスト、ソクラテス、プラトン、アリストテレス、ディオゲネス、ピュロン&エピクロス(ストア派)、プロティノス
●世界情勢●
ギリシャ殖民都市の繁栄、ペルシャ戦争(ポリスの勝利)、アテネ全盛、アレクサンドロス大王の世界帝国成立、共和制ローマの発展、ローマ帝国成立、イエズス(キリスト)誕生、ローマ帝国全盛
●哲学の傾向と大まかな流れ●
傾向:哲学は発祥する。
「宇宙や自然の究極の原理は何か」を考える人々が現れる。テレスやデモクリトスなどがその草分け。それから色々な教養を教えるソフィストが現れ、さらにソクラテスは「よりよく生きるとはいかなることか」「本当の知とは何か」を吟味した。その弟子のプラトンはその問いに答えるためいイデア説を唱える。さらにアリストテレスはプラトンを批判し、個物を中心とした見方を提案する。また、この時代にはストア派など、確固とした根を失った状況をどのように生きるのかを模索した様々な思想家たちが現れた。

【中世哲学(0~1400くらい)】
●哲学者たち●
グノーシス派、テルトリアヌス、アウグスティヌス(主意主義)、トマス・アクィナス(主知主義)、スコトゥス、オッカムのウィリアム
●世界情勢●
イエズス誕生、ローマ帝国全盛、ゲルマン民族大移動、キリスト教の国教化、ローマ帝国の東西分裂、イスラム教成立、イスラム帝国全盛、ローマ教皇権絶頂、十字軍遠征、身分制議会の成立(英・仏)
●哲学の傾向と大まかな流れ●
傾向:合理的で普遍的な「知」と、非合理的で個人的な「信」とのバランスが問題。哲学と神学を調和させること。どちらを優先させるのかが哲学者たちの論争の種。
1.知を重視するグノーシス派vs信こそすべてとするテルトリアヌス。
2.この対立をアウグスティヌスが調停する。彼は知と意志を並置させた。
3.そのため、知の対象である普遍的秩序をどの程度認めるかを巡る論争(普遍論争)が起こる。
4.これを収めたのがトマス・アクィナス
5.ところが、スコトゥスやオッカムのウィリアムはさらに過激な主張を繰り広げ、ついには知と信の共存という中世的な秩序を打ち破る。彼らの登場は、観察や実験による科学を重視し、また、科学を推進する個人に注目する近世的世界観へとつながってゆく

【近世哲学(1400~1800くらい)】
●哲学者たち●
ロジャー・ベーコン、フランシス・ベーコン、デカルト、ホッブズ、パスカル、スピノザ、ライプニッツ、ロック、バークリ、ヒューム、ルソー、ベンサム、ミル
●世界情勢●
ルネサンス、大航海時代、宗教改革、三十年戦争(ドイツの荒廃)、ピューリタン革命、名誉革命、産業革命、アメリカ独立宣言、フランス革命
●哲学の傾向と大まかな流れ●
傾向:合理論→経験論→懐疑論へ。
1.デカルトに始まる合理論は、理詰めの検証によってすべてを説明する哲学システムを作ろうとする。デカルトの哲学は多くの問題も含み、それを批判する中でホッブズやパスカル、スピノザの哲学が生まれる。
2.17世紀後半~18世紀は人々の啓発を図る「啓蒙(けいもう)」の時代だった。理詰めの論証より、経験を重視する経験論の流れは、やがて理性そのものを批判し否定する懐疑論へと連なる。

【近代哲学(1700~1900くらい)】
●哲学者たち●
カント、フィヒテ、シェリング、ヘーゲル、ショーペンハウアー、フォイエルバッハ、キルケゴール
●世界情勢●
プロイセン王国成立、プロイセンとオーストリアの対立、フランス革命、ナポレオンの欧州支配、七月革命(仏)、二月革命(仏)、三月革命(プロイセンなど)、明治維新、普仏戦争
●哲学の傾向と大まかな流れ●
傾向:従来の問題をカントが解決するが、それを批判する哲学が現れる。これをドイツ観念論と呼ぶ。これも完成した後、さらに批判される。
合理論→独断論→↓
経験論→懐疑論→カント→ドイツ観念論(フィヒテ、シェリング、ヘーゲル)←批判(ショーペンハウアー、フォイエルバッハ、キルケゴール)
カントは、ヒュームによって不可能と宣告された自然科学を擁護し、理性の自律と人間の自由を確保しようとした。また、カントは、認識、道徳、芸術という人間活動の諸分野の原理を区別し、各分野の自立をも確保しようとした。
ところがそれでは認識している自我と倫理的に行為する自我がバラバラになってしまう。フィヒテやシェリング、ヘーゲルはそれぞれすべてを統合する原理を求め「ドイツ観念論」を生み出す。
 だが、どんな哲学を作っても、必ずそこから漏れてしまう現実は残る。ショーペンハウアーはペシミズムを唱え、キルケゴールはキリスト教の信仰に基づいて、フォイエルバッハは人間の現実に踏まえて、それぞれヘーゲルを批判する。

【近代哲学2(1850~1900)】
●哲学者たち●
マルクス、ニーチェ、フロイト、パース、ジェームズ、デューイ、新カント派、ベルクソン
●世界情勢●
資本主義の発達、普仏戦争、ドイツ帝国成立、帝国主義の発達、労働運動・社会、主義運動の激化、パリ万国博覧会開催、第一次世界大戦、ロシア革命、ソビエト連邦成立
●哲学の傾向と大まかな流れ●
傾向:従来の自我原則が否定され、人の考えは自分以外の要因によって決定されるという主張が出てくる。
思考する私を基礎とするデカルト、理性の自律を理想とするカントの考えを突き詰めれば、「自分の主人は自分であり、自分が何を考え、何を行うのも自由である」という自我原則になる。
それに対して、人の考えは社会状況や心理法則によって決定されるものであり、決して各人の自由にはならないということをマルクス、ニーチェ、フロイト、ベルクソンらは明らかにした。
また、アメリカでは真理のための真理を偏重するこれまでの哲学を批判し、行為のために真理はあると主張するプラグマティズムが現れる。
そのような中、新カント派の人々は、知識の基礎づけという哲学古来の課題を地道に果たした。
マルクス、フロイト、ニーチェは「現代思想の三統領」と言われ、20世紀の哲学や現代思想に大きな影響を与え続けている。

【近代哲学3(1900~1950)~不安の哲学~】
●哲学者たち●
フッサール、ハイデガー、ガダマー、サルトル、メルロ=ポンティ、レヴィナス
●世界情勢●
非ユークリッド幾何学の登場、相対性理論の登場、第一次世界大戦、ロシア革命、世界恐慌、ナチス・ドイツの成立、第二次世界大戦、冷戦開始
●哲学の傾向と大まかな流れ●
傾向:戦争などが相次ぎ、不安から哲学が生まれる。
我々の経験の構造を徹底的に分析し、それによって実在の真理の意味を解明しようとする「現象学」がフッサールによって創始される。
現象学を受けつつ、世界の存在やその中での我々の位置をより根底から考え直そうとするハイデガー。
フランスでも、フッサールやハイデガーの影響のもと、サルトルやメルロ=ポンティが独自の哲学を展開した。実存の哲学と呼ばれる彼らのキーワードは「不安」だった。
ハイデガーが使った「解釈学」をさらに哲学的に深化したのがガダマー。
また、第二次世界大戦における惨苦を踏まえ、独自の主体性の哲学を展開したレヴィナスは、現代のフランス哲学にも大きな影響を与えた。

【近代哲学4(1900~1950)~言語分析~】
●哲学者たち●
フレーゲ、ラッセル、ウィトゲンシュタイン、カルナップ、クワイン、クーン、ライル、オースティン
●世界情勢●
現代哲学1と同じ
●哲学の傾向と大まかな流れ●
傾向:言語によって従来の哲学を批判する。
哲学に限らず、ものを考えるとき、人は言語や論理に頼らざるを得ない。言葉が曖昧なら思考も誤りに陥る。それを避けるため、曖昧さのない理想的な論理や言語を作り出そうと試みたのがフレーゲやラッセルだった。
とはいえ、人は理想言語ではなく、日常言語によってものを考える。そこで日常言語を分析することによって、陥りがちな思考の誤りを防ごうとするライルやオースティンのような日常言語学派が登場する。
ところが、言語分析をすると、我々は特に意味を理解することもなく、何かを言い、行為していることが明らかとなる。それを明言し、それによってこれまでの西洋哲学の主知主義を否定したのがウィトゲンシュタインだった。
また、科学についての分析は、科学こそが真理だと主張するカルナップが現れたが、それに対し、科学もその都度の時代や社会的要因に依存することを強調するクワインやクーンの反主知主義的主張が現れる。

【現代哲学(1950~2000くらい)】
●哲学者たち●
ソシュール、レヴィ=ストロース、ラカン、リオタール、アルチュセール、フーコー、ドゥルーズ、デリダ、複雑系、オリエンタリズム批判、フェミニズム
●世界情勢●
朝鮮戦争、アルジェリア危機、第五共和制発足(仏)、キューバ危機、ヴェトナム戦争、EC発足、五月革命、ド=ゴール退陣(仏)、ベルリンの壁崩壊、ソ連解体、EU発足
●哲学の傾向と大まかな流れ●
傾向:構造主義、
第一の波は構造主義。実存主義は各人の現実存在を基盤とし、個人の決断を左右する法則は認めなかった。それに対して構造主義は各人の行動を支配する、構造というものがあると主張する。
もちろん、人間を支配する力は従来、様々な形で主張されてきた。神の意志や必然、絶対精神などである。だがそれらは誰か(神)に起源を持つものだったり、絶対精神のように意識のあり方や自然法則、宗教といった要素を弁証法によてとりまとめることによって成立した全体だった。
だが、構造は誰かが生み出したものではなく、要素に先立つ全体である。この考えは言語学者ソシュールが着想し、レヴィ=ストロース、アルチュセール、ラカンなどが応用した。
第二の波は哲学のあり方そのものを疑う形で現れる。フーコー、デリダ、ドゥルーズなどが従来の哲学を根本的なところから否定した。



《まとめ:哲学のタイプ》
最後に、時系列的ではなく、別の角度から哲学を分類する。
1.「絶対的存在の想定」型
自然、イデア、神などが人間を含む万物を創造したという考え方
古代、中世の哲学者がこのタイプ
2.「主観と客観との対峙」型
主観である「私」が客観である世界を認識するという考え方
近世、近代の哲学者がこのタイプ
3.「全体的なシステムの探求」型
言語や経験、概念などのあり方の検討を通じて、すべてを生み出す全体的なシステムを描き出し「人間」もそのシステムの一環にすぎないと考えるやり方。
ニーチェにおける力への意志、ベルクソンのイマージュ、ウィトゲンシュタインの言語ゲーム、レヴィ=ストロースにおける構造、さらに複雑系はその様なシステムの例。


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